ブレーキについて

現在、二輪で使用されているブレーキは油圧ディスク・ブレーキタイプ、ワイヤー式のドラム・ブレーキタイプの二種類がほとんどです。ディスク・タイプは、ブレーキオイルの油圧を利用してブレーキをかけるタイプで、前後のホイールにディスク板が付いています。ドラム・ブレーキは、ブレーキレバーなどにワイヤー引きを利用して、ホイール(スポーク・ホイールタイプ)のブレーキ・カムを動かして、ブレーキを作動させるのですが、ディスク板はついておりません。
ドラム・ブレーキの場合、ブレーキシュー(ブレーキ・パッド)の交換は、完全にホイールを脱着しなければ交換できないので、工賃が比較的高い傾向にあります。また、減り具合の確認は外からの目視では判断することが困難です。
どちらにしても、分解・整備は整備の有資格者でなければ危険ですので、「あれ?なんかおかしい?」と感じたら、ショップの方にご相談ください。


1.  ブレーキ・パッド(ブレーキ・シュー)の寿命

「パッドの寿命は、どれくらい持つの?」とお客さまからよく質問を受けますが、バイクの種類、使い方、地域、パッド材質などによって千差万別ですので、一般的な回答がしにくいのが実情です。1万km走行程度で即交換必要なケースもあれば、2万kmでもまだまだ大丈夫なケース等さまざまです。
しかしながらそうも言っていられませんので、大雑把ですが走行条件による寿命の違いについて説明できたらと思います。

パッドの寿命は、使用温度によって大きく左右されます。温度が高いほど寿命は比例的に短くなります。またパッド材質によってもその傾向は違ってきます。例えば、スポーツパッドはノーマルパッドに比べて高温での摩耗を少なくして寿命を長くしています。
つまり、パッドの寿命を長くするには、出来る限りパッド温度を低くすれば良いのです(また、パッドは高温では摩擦係数が小さくなりますので、この点からもパッド温度を低く抑えることが重要になってきます)。
そのため、ローターでは外径・厚さアップ、冷却用通風孔の設置など工夫を凝らしています。一方ブレーキではパッド寿命を長くするためにパッド面積・摩擦材の厚さアップなども行っています。山道のワインディング走行やサーキット走行を頻繁にされる方は、特にパットの減り具合に気をつけてください。
一般走行では、街乗り、高速道路、山道など織り交ぜて使いますので、その割合も考慮する必要があり、寿命の推定はより難しくなります。
一般的には、厳しいブレーキング(山道走行など)が多いほど、車重が重いほど(ブレーキサイズは車重が重くなるほど大きくないため)パッド寿命は短くなると覚えておいてください。
また、パッドは厚みが薄くなるにつれ、摩耗速度が速くなります。厚みが薄くなると断熱効果も小さくなり、パッド温度の増加で摩耗が促進されるからです。まだ半分残っているからいままでと同じ走行距離分大丈夫だ、ということにはなりません。
以下は、寿命に影響をおよぼす注意点をまとめました。

・ローターは錆びないようにしましょう。錆びが研磨剤の役目をします。
・ローターの傷を見つけたら、研磨あるいは交換を行いましょう。
・急制動は、パッド温度が上がりやすくなりますのでやめましょう。
・坂道ではエンジンブレーキを使いましょう。フェードの防止にもなります。
・ブレーキの点検を十分に行いましょう。
(作動不良はパッドの引き摺り摩耗につながります。)

パッドは熱、水、泥などが加わると、錆びたり(裏板、ライニングに使われている金属材料など)、変質(ライニング、接着剤)したりして劣化し、場合によっては性能を十分に発揮できないことがあります。
勿論、錆び、変質、摩耗状況、傷・汚れなどを点検して大丈夫な場合は継続使用も可能です。
なお、保管されたままのパッドは、よほど保管状態が悪くなければ、使用は可能です。表面などが汚れたり、油が付着している場合は、表面を紙ヤスリでサーと落してから使ってください。


2.  ブレーキ・オイルについて

ブレーキ・オイルの役目は、@ブレーキ・レバー/ペダル→A倍力装置→Bリザーバータンク→ Cブレーキホース→Dブレーキキャリパーの一連の働きの中で、B〜D間でブレーキ力を伝達することです。だったら、一般のオイルでも水でもいいのではと思われる方もいるでしょう。
しかし、沸騰すると、(ブレーキ時はディスクなどがかなりの高温になり、その温度がブレーキ・オイルの温度を上げる)液にエアーが入り、ペーパーロック状態(気泡によるスポンジのような状態)になり、いくらブレーキをかけようとしても、肝心の力の伝達が不能になってしまいます。
100℃で沸騰する水では役にたちません。そのため、沸点の高い専用オイルが必要になってきます。次に規格ですが、サーキット走行をされる人なら、ご存知と思いますが、DOT3、DOT4、DOT5といった沸点の違いによる区別です。沸点にも2つあります。新品時のドライ沸点と、水を吸った時のウェット沸点です。ブレーキ・オイルの成分が水を吸収しやすい性質があるので、ウェット沸点で性能を見る必要があります。

a. DOT3  ドライ沸点・・・205℃以上  ウェット沸点・・・140℃

b. DOT4  ドライ沸点・・・230℃     ウェット沸点・・・155℃

c. DOT5  ドライ沸点・・・260℃     ウェット沸点・・・180℃

以上の通り、ブレーキ・オイルの劣化(ウェット沸点)になると、極端に沸点が低くなることがわかります。

大雑把に使い分けますと、
・DOT3は、一般走行からスポーツ走行
・DOT4は、ハードなスポーツ走行(サーキット走行等)
・DOT5は、サーキット走行(本格レーシング)
向きです。

しかし、DOT5はシリコン系なので、それに見合ったゴムの耐性が要求され、シール類の交換も同時に必要になってきますので、使うには少し敷居が高いようです。尚、DOT3規格のブレーキ・オイルに、新品のDOT4を補充するといった混合使用は、避けて下さい。

交換タイミングですが、一年毎の交換をお勧めします。(最低でも車検毎)
ブレーキ・オイルが劣化するとWET沸点が下がり、ベーパーロックしやすくなるのは勿論、ゴムシールの劣化、金属の腐食をさせやすくなる等、悪影響を及します。


3.  ブレーキ・キャリパー(ブレーキ・ドラム)の清掃

ブレーキを使用すると、必ずブレーキ・パッド(ブレーキ・シュー)の削りかすが発生します。大半は外に出ていきますが、ドラム・ブレーキなどはドラム内に残るケースが多く、ディスク・ブレーキのタイプもブレーキ・キャリパー(ブレーキ・パッドが収まっている部品)の中のピストン周りに固着していきます。どちらも定期的に清掃をしなければ、ブレーキの性能自体を落としてしまいます。場合によっては完全に分解して清掃しなければいけない事もあります。同じように、ブレーキ・レバー側にあるマスターシリンダー/ピストンも清掃の対象となります。この作業も高度な作業になりますので、ショップさんにご相談ください。